第4回講義レポート-サスティナブルデザインについて

受講日
受講生
Y.M.
STRAMD OSAKA 2017 第4回講義(1)

デザインとは本来、ポジティブ・楽天的なものですが…というお話しから始まった今回の講義。デザインに携わった経験のあるわたしとしては、衝撃的な内容が多かったです。

消費・競争というデザインの影の部分に焦点を当て、デザインの倫理と社会の変革についてお話をいただきました。

デザインと環境問題との関係性を考えるようになったきっかけ

インダストリアルデザイナーとして活躍していたある時、ご自身がデザインされた洗濯機が河原に捨てられていたのを見つけた。

この洗濯機は数百万台売れたヒット商品=数万台のゴミになっていることに気づき、人に何かを買わせて消費を生み出すデザイナーが環境のことを考えなくては!という考えのもと、デザインと環境問題との関係性を考えるようになったそう。

世界的にも1990年代からこの議論が始まり、デンマーク、オランダ、スイスから日本へとこの考え方が広まっていった。

日本の消費のあり方の変化、サスティナブル社会の崩壊

日本人は古来より、物づくりが得意な民族で、伝統工芸品は、外から資源が入ってこない鎖国時代からきちんと循環する素材でつくられてきた。

木造の建物を燃やしてもCO2による環境破壊の影響はない等、完全に循環する資源を使って作られる【サスティナブルデザイン】はこの頃すでに日本にあった。デザインとはこうあるべきとのお考え。

しかし、開国による文明開化をきっかけに、世界との「競争」に加わり、消費、戦争、侵略によって循環は壊れた。日本は戦後わずか10年で様々な物を作って輸出するほど復興したが、その頃から素材はプラスチックなど循環しない素材に変わってしまった。

伝統工芸品の材料までも輸入に頼っている日本の状況

自然界に循環しないものは、それだけを集めて再利用するしかないが、お金や手間がかかる。自然界に循環するものを使っていくほうが良い。

日本が輸入しているものは多く、食品や石油、鉄などがあるが、かつては日本国内で循環していた伝統工芸品の材料である、漆(うるし)や陶土(とうど)、絹などの90%以上を輸入に頼っており、日本国内の素材だけでは伝統工芸品を作ることができなくなってきている。

貧困国から木材を輸入する「グリーンウォッシュ」の問題

中でも特に問題なのが、日本には森林が多く、本来なら100%国内の木材でまかなえるにもかかわらず、木材の75%を輸入していること。理由は輸入したほうが安いから。

貧しい国は、その土地にある資源を売って輸出することになる。ハイチの森は、木を切って生計を立てた結果、ハゲ山になった。

ハイチなどの貧困国から木を買い、タイ等で合板加工し、日本に輸入することで加工国のタイから木を輸入しているように見せる「グリーンウォッシュ」で世界から顰蹙(ひんしゅく)を買わないよう工作している。

一度木を切ってしまうと元どおりにするには何十年もかかってしまう。その間に生態系や天候などにも影響を与えてしまう。

日本の中にある代替材料をデザインに活かす

しかし、日本の資源の中で木を切らなくても代わりになる素材はある。例えば、孟宗竹(もうそうちく)は一日に1メートル伸びる成長の早い植物で、
音の通りが良く、楽器に適した素材である。和紙は本来、蔓草(つるくさ)の繊維を使った素材で、これも成長が早い。

木を切ることもなく、環境に循環できる素材。このような材料を使っていくことがこれからのデザインには必要なのでは。

増田先生は廃校を活かして図書館にしたり、竹で作った自転車を開発したりと、さまざまなプロジェクトを海外の学生や地域の方たちと取り組んでいる。

エコプロダクトの矛盾

リーマンショックによる日本経済低迷期に消費促進対策の一つとして政府が推進した「エコポイント」は、環境にやさしい製品の購入費用の一部を還元されるということで当時大変話題になり、プリウスや省エネ家電などのエコプロダクト製品が飛ぶように売れた。

しかし、「今ならエコプロダクト製品は安く買える!」と消費者を煽った結果、より大きな冷蔵庫、より省エネなエアコンなどを一家に2~3台購入する人が増え、CO2排出量がたとえ従来の半分になるとしても、むしろ環境破壊を促進したことに。
【エコプロダクト≠環境にやさしい】ということがわかった。

S(スモール)L(ローカル)O(オープン)C(コネクティッド)

巨大なことから小さなことへ、物質主義的なモダンデザインは崩壊していく。

大企業や大都市などによる一極集中の時代から、個人レベルで小規模に小回りのきく働き方ならば、自分がやっていることをオープンにして周りの人とシェアすることで新しい知識が増え、社会の発展につながるのでは、という中西先生のお話しの中にも出てきた消費社会の未来にも通じるお考え。

デザイン×◯◯、Design for X

ユニバーサルデザイン、キッズデザイン、くらしのデザイン、エシカルデザインなどただ消費を促すデザインだけでは、これからのデザイナーとしてはダメ。デザインを通して社会を良くしていくことが求められる。

エシカルデザインと、考えたり調べたりすること

エシカル=「倫理的」「道徳上」ということ。

地球上の水を100%とすると海水を除くと0.02%しかない。その貴重な水源を買い占め、ボトルウォーターとして国内外への輸出で利益を得ている企業がある。水源の地域ではボトルウォーターよりもコーラの方が安いというような矛盾も。

また、少し前に話題になったアレッポの石鹸は、内戦の続くシリアのアレッポを支援するかたちで作られた。しかし、製造元の中にはイスラム国へ資金を流すようなところもあるかもしれない。

消費するときには、倫理的な問題を考えた上、しっかりと調べて購入すること、デザイナーは、どこからきた素材か、世の中に送り出すことでどのような影響があるかを考えることがとても重要。